静かな生活2012年06月01日 22:15

 先日、伊丹十三監督の映画「静かな生活」のDVDを観ました。この作品は、1994年にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎の長編小説です。大江氏と伊丹監督は高校時代の級友で、この小説に惹かれた伊丹監督が脚本を手掛け、1995年に映画化されました。大江健三郎氏の実子、大江光(音楽家)とその家族、環境を題材としており、「人は支え合って生きていくものなのです。」というテーマが掲げられていました。音楽の才能に恵まれながら障がい者である兄イーヨーと、絵本作家を目指すマーちゃんという妹の話。その家族は、イーヨーの障がいをよく理解していましたが、はたから見ると、その生活は決して静かな生活ではありませんでした。それでもマーちゃんは兄のことを絵本にし、タイトルを「静かな生活」とつけました。私は、知的な障がいをもつ人の思春期の性について、本人と家族、そしてその周りの人々の向きあい方が、とても上手く表現されていると思いました。
 イーヨー役を演じていたのは渡部篤郎。素晴らしい演技でした。「静かな生活」は、伊丹監督作品の「お葬式」から始まって、「タンポポ」「マルサの女」「マルサの女2」「あげまん」「ミンボーの女」「大病人」に続く作品でした。その後、「スーパーの女」「マルタイの女」と続きます。伊丹監督は、この「静かな生活」の作品を通じて、若い人に真剣に生きていることのカッコ良さを知ってもらいたいと思ったとのこと。
 実は私も、子育てをしながら同じようなことを感じたことがあります。最近は、「真面目」なことをカッコ悪いと思われがちです。ダサイと言ったほうが正しいでしょうか。だから、真面目に生きている子どもがいじめられたり、変な人に見られたり…。本当は、真面目に生きることはとっても大変なことなんですよね。特に今の時代は。私は、真面目で誠実な人が好きです。そういう人のユーモアは、人を傷つける言葉ではなく、きっと温かいのではないかと思います。